アコギ&ハーモニカ主体、ハモリ、路上出身という基本スタイルを持つ安岡信一(23歳)&本多哲郎(21歳)の二人組によるメジャー初のアルバムは、その純粋なまなざしがとらえた、日々の小さな苦悩から大きな夢までが率直に歌われている。題材はサッカー小僧だった自分だったり、アリになりたかった自分だったり、大切な誰かへのメッセージだったり、生きることの意味だったり……。そこにギュッと詰まったのは、あまりに青く、若々しい感性。昔ユーミンは「青春の後ろ姿を人はみな忘れてしまう」と歌ったが、彼らの世代をとうに通り過ぎた私にそれは、気恥しさと同時にひと呼吸置いたリアリティを運んでくれた。同じ時代を生き、出会った、この生まれたばかりの音楽はそういう意味で幅広い世代それぞれに見合った響き方をするだろう。とても器の広い一枚だ。“九州のゆず”という言われ方をしてきた印象もあるが、単なるフォロワーでないことは今作で証明されたといえる。この先の成長に注目。