日本民謡「江刺追分」で始まり、南米、北米を回りエジプト、アラブ(ライ・ミュージック)を経て、地中の海「プリオシーヌ」に至る。すばらしい音楽遍歴。プチ世界旅行風にまとめられ、非常に完成度の高い作品です。「泰安洋行」にみられるように、細野さんの作品上のひとつのテーマは旅。そのときの興味にしたがって行き当たりばったり、様々な音楽様式を旅する細野さん。彼の興味をひとくくりにするために、ワールドミュージックという言葉が使われているのかもしれません。ライナーを読んでびっくりするんですが、この作品で細野氏はアラブ・ライミュージックに触れ、「アラブ対自分」を表現しようといていたこと。ついでにグローバリズムとナショナリズムについてもふれています。このテーマは、21世紀にはいってからエイドリアン・シャーウッド等、先鋭的なアーティストたちがとりあげていること。この作品が、いまから20年前1989年に発表されていることに驚愕です。まさに恐るべき先進性。巨人のなせるわざです。