俺は彼女の隣に座ったまま
ブランコを漕ぐ子供を見ている
意地を張るように 遠い一点を
その視線を辿ったあとで彼女は
こちらを振り返って気まずそうに笑った
髪が鼻先を掠めて少し仰け反る
黒髪から黒染めの匂いがする
変わったのか 変わっていてほしいのかわからない
どうあってほしいとか ない けど
口元を隠す指の 黒いネイル越しに広がる
しどけない夜の 揺れない星だけを見つめて
その爪を 俺は剥がしてみたくなる
ごめん 今 無愛想に彼女を置きざりにして
俺は 真っ直ぐに 夜を
引き摺ったまま走っていく 朝